2024年8月

原価計算の種類

2024年8月18日

印刷業の原価計算を正確に算出すると正確な月次決算が実現します。
印刷会社に勤務していた時、社長から「実際利益で報償制度をやりたいので次月の5日までに正確な月次決算を出してほしい」と言われ、3年がかりで実現した経緯を披露します。

原価計算の種類
 原価計算には計算方法のちがいから総合原価計算と個別原価計算があります。 家電や自動車のような単一製品の製造ラインでの原価計算は一定期間に何個の製品をどれだけの費用で製造したかを集計し、1個当たりいくらで製造できたかを算出するのが総合原価計算です。印刷物は製造工程が多く、1個あたりの生産期間が短いので総合原価計算では個別の損益が把握できません。印刷物には1受注品毎の生産原価を個別に集計して粗利益を算出する個別原価計算が必要です。個別原価計算には標準原価計算と実際原価計算があります。標準原価計算は各工程、例えば、印刷の製造単価は1枚当たりn円n銭と標準原価を設定し、印刷サイズや印刷枚数の違いに格差をつけて標準単価表をつくるのが一般的です。実際原価計算は各工程の時間単価または分単価を定期的に算出し、個別の受注品ごとに要した時間に時間単価をかける計算方式です。例えば、印刷の場合でもある受注品の印刷のために前準備から後処理まで何分かかったかを集計するだけです。枚数やサイズは関係ありません。使われた時間がコストなのです。特に、プリプレス部門における原価計算には標準原価計算は不向きです。校了までに発生する追加・変更を予測することは困難だからです。原価計算にはこの他部門別原価計算があります。組織の拡大とともに製造工程が成長して部門が形成され、管理できる範囲内の部門が組織されてゆきます。部門別原価計算は製造部のなかでも非生産部門費の配賦基準の設定が必要になります。生産部門として採算がとれているか、赤字ならばどれだけ赤字なのかを把握することは非常に重要なことです。採算を見るには一定期間にその部門が消費した直接費、間接費(非生産部門の配賦分を含む)を社内振替価格から差し引いた額に仕掛金額を加えた額になります。

月次決算と仕掛管理

2024年8月11日

印刷業の原価計算を正確に算出すると正確な月次決算が実現します。
印刷会社に勤務していた時、社長から「実際利益で報償制度をやりたいので次月の5日までに正確な月次決算を出してほしい」と言われ、3年がかりで実現した経緯を披露します。

月次決算と仕掛管理
 企業が適正利潤を確保し、決算に向けて営業計画/経費計画などの予算管理をすすめるためには正確な月次決算を毎月実行することが必要になります。決算に必要な情報は損益計算書及び在庫材料・製品・半製品の他に製造中の仕掛金額があります。仕掛金額は総合原価計算では把握できません。個別原価計算によって発生した未売上分の原価を集計するだけで正確な仕掛金額が集計できます。月次決算が実現すれば納税/金融などの対応も計画的に実行できるようになります。仕掛金額の集計にあたっては月末・年末時点での仕掛か売上済みかの判断が重要になります。実際には納品済みでも、売上処理がなされていなければ仕掛かりになります。従って、仕掛リストを担当者別に集計して担当者にチェックさせることにより、売上漏れや請求漏れが発見できることがあります。印刷業は月次決算が困難であるといわれる理由は、この仕掛データが把握しにくい点が大きな原因なのです。

個別原価計算と総合原価計算の関係

2024年8月4日

印刷業の原価計算を正確に算出すると正確な月次決算が実現します。
印刷会社に勤務していた時、社長から「実際利益で報償制度をやりたいので次月の5日までに正確な月次決算を出してほしい」と言われ、3年がかりで実現した経緯を披露します。

個別原価計算と総合原価計算の関係
 個別原価計算とは受注品毎に発生原価を集計し、着手から完成までの期間は問いません。総合原価計算は単一製品例えば自動車や家電などのように連続して作り続ける製品の場合は1月毎に期間を区切って原価を集計し、期間損益を算出する方式です。印刷業の場合は、毎日異なった受注品が生産ラインを流れ、同じ製品が繰り返し生産されることがほとんどありません。従って、印刷業の原価計算は個別原価計算が基本になります。しかし、各工程はその作業内容においては同じ作業の繰り返しであるため、各工程別には総合原価計算も実行する必要があります。個別原価計算と総合原価計算を併用することによりいままできずかなかった問題点や改良点が発見されます。印刷業の個別原価計算は受注品ごとに受注番号を取り、その番号で作業指示や発注、仕入れを行い、原価を集計して粗利益を算出します。算出された粗利益を月間、年間で累計し、月次決算・年次決算と比較して同額に近くなるまで各工程の時間単価を修正してゆきます。平行して総合原価計算も実施し、各工程の月間・年間の実績を集計して適正原価の追求をします。