製造経費についての考え方

2024年6月16日

印刷業の原価計算を正確に算出すると正確な月次決算が実現します。
印刷会社に勤務していた時、社長から「実際利益で報償制度をやりたいので次月の5日までに正確な月次決算を出してほしい」と言われ、3年がかりで実現した経緯を披露します。

製造経費についての考え方
製造経費とは、材料費と労務費を除くすべての費用です。一般に知られる減価償却費や外注費電力料のほかに公害防止費、棚卸減耗費、仕損費なども含まれます。減価償却費は決算書に添付される減価償却台帳の明細に記録されていますが、利益調整(金融対策から赤字決算を避けるために減価償却額を減額)されている場合もあるので、原価計算上は償却すべき額を計上します。リース物件の場合はリース料が減価償却額に相当します。賃借料は自社ビルの場合、近隣の賃借料の相場を換算して計上します。修繕費やリース料などを支払経費と言い、換算する費用例えば電力・ガス・水道料や棚卸減耗費などを測定経費と言います。個別の受注品に配分が困難な経費を間接経費と言います。減価償却費、電力料、修繕費、賃借料などほとんどの経費が個々の受注品に配分することが困難です。そこで予定配賦率として時間単価または分単価を算出し、個々の受注品の生産に要した時間を掛ければ実際原価が集計されます。一般的に予定配賦率は月単位で算出しますが、印刷業の場合は一年単位つまり一決算期毎に算出するほうが現実的です。具体的に予定配賦率を算出するには、設備だけに時間単価を設定するか、設備とオペレーターの合算で算出するかを決定しなければなりません。個々の受注品に要した時間を作業日報で報告させ、その時間を時間単価でかけて実際原価を集計するためには設備とオペレーターの合算方式のほうが合理的です。その手順を簡単に説明すると、その設備の直接経費は減価償却費とオペレーターの賃金だけでその他の経費は全て間接経費になります。例えば、電力・ガス・水道料や福利厚生費・賃借料・修繕費・消耗品費などです。これをどのように配賦するかがポイントです。経費の性格により配賦基準が異なります。例えば、賃借料は面積比率で福利厚生費や交通費などは頭割りで配賦します。これでその設備の直接経費と間接経費が集計されます。月単位で集計するか年単位で集計するかですが、決算書に添付される製造原価報告書は年間総原価の実績額ですからこれを使えば昇給分を除きほぼ現実に近いコストが集計されているわけです。従って、月間推定配賦率を計算するよりも年間実績をもとに経費を算出するほうが簡単でしかも実際原価に近い単価が得られます。しかし、まだ年間原価が把握できただけです。その設備が前年度何時間稼働したかを賃金台帳などから把握し、稼働率を推定して実稼働時間を設定します。例えば、年間作業時間を2000時間とし実稼働率を80%(前準備・後処理も含む)ならば1600時間で割れば時間当たり単価が算出され、さらに60分の1が分単価になるわけです。時間(分)単価が把握できれば、日々の作業日報の所要時間を入力するだけで実際原価が集計され、実際粗利益が算出できることになります。